環境汚染ガスによって発生した不具合としては、基板端子の腐食、媒体潤滑剤の劣化、媒体磁性膜の腐食やヘッドの読み出し/書き込み用の磁性層の腐食などがある。
Webネタ
日経テクノロジーオンライン
そのHDD/SSDはなぜ壊れた?プロが教える故障の裏側
HDD編(1)環境雰囲気が媒体/ヘッドを蝕む、敵はあらゆるところに
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20140702/362344/
現象としては稼働時間が1~2年以内で、故障が多発する例が多い。中には稼働開始後、数カ月で故障に至る例もある。 基板端子が腐食するとHDDへの通電が不通となり、HDDは起動しなくなる。媒体潤滑剤の劣化はヘッドの浮上量を不安定にして媒体表面に傷を付ける。この結果、エラーが多発し、最終的にはヘッドが媒体情報を認識できなくなり、故障に至る。また、ヘッド金属部の腐食も媒体情報の認識ができなくなる原因となる。
環境汚染ガスの種類
では環境汚染ガスにはどのような種類があり、どこから発生し、どのような悪さをするのか。以下に我々がこれまで遭遇した汚染物質について紹介する。
【有機溶剤(アルコール/トルエン類)】
洗浄機の有機溶剤、オイル成分の脱脂用の有機溶剤、HDD清掃時に使用するアルコール類から揮発したガスや燃料系(ガソリンスタンド)の揮発成分もHDDの大敵である。
これらがHDD内に吸い込まれると、媒体の潤滑剤のオイル成分を分解・劣化させる。
最近のHDD媒体の潤滑剤の厚みは15~20Å程度である。正常状態ではヘッドが媒体に接触しても問題はないが、潤滑剤の分解・劣化により、厚みが半分(50%)以下に減ると、ヘッドと媒体の摺動特性が悪化し、ヘッドがスムーズに媒体上を浮上できなくなる。結果として読み出し/書き込みエラーが発生するようになる。さらに、潤滑剤が減少し続けるとヘッドスライダーと媒体の接触抵抗が大きくなり、媒体の金属を削り取り、円周上に傷が残るクラッシュに至る。
DD-RESCUEより
媒体の潤滑剤のオイルがどのようなものであるか、正しい知識を持っているのだろうか。プラッタに塗布されている潤滑剤は、宇宙空間などの真空中で使用されるボールベアリングなどで使用することを目的に開発された、フッ素系のオイルなのだ。宇宙空間での太陽光の直射による高熱に耐え、また光の当たらない極寒の環境にも負けず、蒸発することも無く、化学的に安定していることが求められている。そのオイルが、空気中に含まれる有機溶剤から揮発したガスによって分解・劣化すると公言するのは笑止千万である。
この潤滑剤が、HDDの運転時間により、プラッタ上で外周に偏っていくことは観察されているが、その原因は潤滑剤が粘度が高いとはいえ液体であるために、プラッタの高速回転による遠心力によるものである。また、「ヘッドと媒体の摺動特性の悪化によりヘッドがスムーズに媒体上を浮上できなくなる」としているが、ヘッドの浮上は、プラッタの高速回転による気流によって浮上するのであり、浮上できなければ、その抵抗によってプラッタの高速回転が妨げられるので、「摺動特性の悪化により、スピンアップが出来ずにHDDが認識できない原因となる」はずであり、「読み出し/書き込みエラーが発生するようになる」と説明するのは、支離滅裂であるとしかいえない。